2018年からブロックチェーンゲームを展開し、ゲームプラットフォーム『PlayMining』、ゲームタイトル『JobTribes(ジョブトライブス)』、トークン『DEAPcoin』などを展開するDEA社(Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.)。今回はDEA社創業者の山田氏、ゲームプロデューサーの清田氏に、ブロックチェーンゲームの現状や展望について伺いました。
DEA創業者、共同CEO 山田耕三 氏
東京大学法学部を卒業後、テレビ東京へ入社し音楽・バラエティ番組の制作を担当。2018年に独立し、シンガポールにてDEA社を創業。ブロックチェーンゲームプラットフォーム『PlayMining』の運営、Play to Earnトークン『DEAPcoin』の日本初上場を推進。Twitterフォロワーは約17000人に上る。
DEAゲームプロデューサー、アートディレクター 清田貴史 氏
多摩美術大学を卒業後、コーエーテクモゲームス、任天堂など日本の大手ゲーム会社でデザイナーとして活躍。その後、携帯電話向けコンテンツのプロデューサーとして多数のヒットタイトルの企画・開発に関わる。2017年プロデューサーとして独立後、2018年に京都を拠点とした開発スタジオを設立。
ゲーム業界の現状
現状のゲーム業界は、少しいびつなマネタイズ構造になっている可能性があります。
ゲーム業界、特にコンシューマーゲーム※においては、お客さんがソフトを購入することで売上が上がる、という一方向のマネタイズが長年続けられてきました。
しかしよくよく考えてみればこのマネタイズ手法には問題があります。
このようなマネタイズ手法だと、どこまでいってもゲーム会社の直接のお客様はゲームプレイヤーに絞られます。そして純粋なゲームプレイヤーの総人口にはいつか限界が来るでしょう。
任天堂の人気ゲームシリーズ『ゼルダの伝説』の最新作が5月12日にアメリカで発売されますが、その価格はこれまでの任天堂シリーズの価格を大きく上回る69.99ドル(約9200円)です。
この値上げは、昨今の世界的なインフレの影響とも考えられますが、一方でゲーム開発費の増大とゲーム人口の頭打ちを鑑みた、将来的な売上アップのための施策とも考えられます。
ゲーム業界は今、大きな転換点を迎えているのです。
※コンシューマーゲームとは、家庭用ゲーム機やパソコンなどの個人向けのゲームソフトを指します。任天堂のNintendo SwitchやSonyのPlayStationなどが代表的なコンシューマーゲームのハードウェアです。
拡大を続けてきたゲーム全体の市場規模は、2020年をピークに横這いへ
画像引用元:PRTIMES – ゲーム業界データ年鑑『ファミ通ゲーム白書 2022』発刊 国内外のゲーム市場を最新データで分析
動画のマネタイズの流れを踏襲
ゲームのマネタイズの流れは、動画コンテンツのそれに従うと睨んでいます。
動画のマネタイズを3段階で表してみましょう。
それは、①映画、②テレビ、③YouTube、と分けられます。
①の映画の段階。これは言い換えると、ある特定の動画コンテンツに対してお客様から直接お金が支払われるケースです。1895年に入場料金を徴収した映画コンテンツが上映されてからテレビ放送が主流になるまでの約50年間、動画コンテンツのマネタイズはこのような方式でした。
②のテレビやYouTube。この段階になると、動画コンテンツを見る人とお金を払う人は分離していきます。コンテンツを制作したテレビ局は、視聴者から視聴料金を徴収するのではなく、動画コンテンツの中の広告宣伝の枠を企業に向けて販売する形で広告収入という売上を立てています。
そして③のYouTubeは、②のマネタイズ手法の応用です。YouTubeの運営が企業側に広告宣伝枠の販売を行いマネタイズを行います。ただし、テレビと比較して動画コンテンツプラットフォームとしての拡張性が非常に優れています。プラットフォームの運営と適切なインセンティブ設計によりコンテンツ量の確保は容易になりますし、テレビの放送枠の縛りによって動画コンテンツの内容が薄まることもありません。
現在のゲームにおける主流なマネタイズは、動画における①の段階です。会社が発売するゲームソフトを、直接お客様が購入する形ですね。
スマホゲームなどでは既に②のようなマネタイズが成されているケースはありますが、①ほど規模は大きくありません。このような状況を考えると、まだまだゲームのマネタイズには拡大余地があり、その拡大を可能にするのがブロックチェーンゲームというゲーム様式だと思います。
ブロックチェーンゲームの立ち位置
ブロックチェーンゲームについて議論する中で、よくされる質問があります。
「そのブロックチェーンゲームは、面白いのか?」という質問です。
確かにゲームとしての面白さは重要ですが、将来的なゲーム像を考える上で最もクリティカルな要素は単純な『面白さ』ではないと考えています。
ブロックチェーンゲームには、もっとメタ的なユーザー体験としての価値(面白さ)が見出されるのだと思います
従来のゲームとブロックチェーンゲームを比較することは、ゴルフとゲートボールの面白さを比較するようなものです。どちらも似た見た目のスポーツですが、ゴルフがスポーツそのものとしてプレイすることに面白さがあるのに対して、ゲートボールはチームプレイを行うことで生まれる交流にユーザー体験としての価値があるのだと考えます。
メタ的な面白さの具体例としては、承認欲求が挙げられるでしょう。弊社DEAのゲームタイトル『JobTribes』では、フィリピンの貧しい人々に対してスカラーシップという制度で雇用を創出しているコミュニティが存在します。
web3って結局、何ができるの?
という問いへの回答の1つとして。PlayMining のPlay to Earnでは実際に貧しい人々に雇用を創出し持続可能性ある貧困対策を推進しています。感謝の言葉を共有してくれたSakuraギルド様@sakuraguild_sgありがとうございます!#web3 #PlayToEarn #ESG #DEP pic.twitter.com/HY9n1zZgUa
— KOZO Yamada|NFTプロデューサー|山田耕三 (@kozo_tx) January 24, 2022
単発の寄付ではなく継続的な支援を実現し、支援する側も利益を出しながら続けられる。ゲーム本体のエンターテインメント性よりも、このような人助けに対する幸福感をユーザー体験として提供できていると考えています。
ブロックチェーンで何ができるのか?以前から良く聞かれました。私の答えは「人助けができます、それも寄付じゃなく利益出しながら」いまならそう答えます。
みんなが考えつかなかったイノベーティブな方法で社会課題を解決できます。 https://t.co/jstBhsNnbL— NAOHITO"GORO"YOSHIDA 🇸🇬DEP (@yoshidadea1) January 24, 2022
AI技術の進歩とゲーム飽和時代の到来
2022年11月にリリースされたChatGPTを皮切りに、画像生成や音楽生成などありとあらゆるユースケースのAIが世界を席巻しています。
このような昨今のAIトレンドは、ゲーム開発にも大きな影響を及ぼすことは想像に難くないでしょう。
具体的な未来予想としては、AIによってゲームが量産されることで今以上のゲーム飽和時代に突入すると思います。
何億、何十億のゲームタイトルがAIを活用することによって量産され、ユーザーはプレイするゲームを選ぶのも一苦労になるでしょう。
そんな中で、先陣を切ってゲームをどんどんプレイする人たちが出てきます。ゲーム自体はプレイ人口が多い方がゲーム全体として盛り上がります。こういった背景を考えると、このような人たちには金銭的または物質的なインセンティブを支払ってでも初期の認知や規模拡大に貢献してもらいたいと考えるゲーム会社が出てくるのが自然ではないでしょうか?
ブロックチェーンゲーム黎明期の今、ゲームの概念をアップデートする必要がある
ブロックチェーンゲームが登場したことで、ゲーム開発やゲームの面白さ、ユーザーがゲームに求めている体験などといったゲームの在り方を、今一度根本から考え直して新しいゲームの形を作っていくフェーズに入っているのだと思います。
ゲームを単なるエンターテインメントに終始させず、より良い世界を創り出していくためのツールとして活用する。そのような未来が実現できれば、よりブロックチェーンのマスアダプションにつながるのではないでしょうか。
左から山田耕三氏、弊社代表の石井、清田貴史氏