NOT A HOTELに学ぶD2C企業のデジタル会員証

投稿日:2023年3月16日 | 最終更新日:2023年5月29日

NOT A HOTEL NFTとは

 

 

6/21にNOT A HOTELは、NOT A HOTEL NFTの販売を発表しました。

 

このNFTは、1つ125万円〜という高額商品でしたが、

販売開始たった1時間で3億円分のデジタル会員証が完売しました。

 

主な特徴として、以下の通りになります。

 

  • 毎年同じ日に全国どこかの「NOT A HOTEL」に宿泊可能
  • NFTは毎年届き、二次流通をすることもできる
  • 有効期限は47年間続き、価格は125万円〜

 

この特徴を紐解く中で、様々な不動産業界の問題を解決することに気づきます。

 

NOT A HOTEL NFTは設計として非常に革新的なものであり、

NFT業界でも大きな話題となりました。

 

 

なぜわざわざNFTを利用する必要があるのか

 

まず今回NFTを活用する大きな目的として、購入者層の新規開拓と物件の流動性をあげることが挙げられます。

 

NOT A HOTELは、富裕層向けに別荘を販売しており、数億円〜で「シェア購入」として30日間利用する場合でも数千万円〜というかなり高額であり、一般層には手軽に手を出せない商品でした。

 

そこで、一日券を販売することを考えられたそうですが、不動産を所有する場合には、たった一日であっても「重要事項説明」をしたり、「登記」などの複雑な手続きをする必要があります。

 

 

NFTを利用することによって登記をして法的に証明することはできないですが、ブロックチェーンで所有者を証明することで、自由に利用したり、その権利を売買できるようになりました。

 

どういった数字上のインパクトがあるのか

 

CEOの濱渦さんが、自身のtwitterでこのようにご説明されてました。

 

 

空室の時のコストを宿泊者に負担して頂くか、稼働率100%で低価格で提供するか。

 

NOT A HOTEL NFTが目指した仕組みは後者とのことです。

 

これまでのホテルの場合、

スイートルームの一泊の値段は20~30万円、稼働率は10%

→ 30日 x 10% x 30万円=90万円/ 月

 

NOT A HOTEL NFTの場合、

スイートルームの一泊の値段は2~3万円、稼働率は100%

→ 30日 x 100% x 3万円=90万円/ 月

 

確かに、売上は変わることなく低価格で提供する中で、

消費者の満足度を上げることが可能になります。

 

また、NFTを通じてキャッシュポイントを前倒しにできることも大きなメリットです。

 

今回のNOT A HOTEL NFTは以下の形で販売されました。

 

・MEMBERSHIP S:150万円、1泊/年、658NFT

・MEMBERSHIP X:570万円、3泊/年、24NFT

 

47年間のキャッシュフローをNFTを通じて先に取得することで、

圧倒的に資本効率がよくなります。

 

冒頭に申し上げた通り、プレセールでは1時間で3億円の売上を記録しました。

 

この売上を元に、NOT A HOTELはさらに事業投資を進めることが可能になります。

 

 

NFT分析から見る、NOT A HOTEL NFTの特徴

 

最後にかなり専門性が高いですが、

NOT A HOTELのオンチェーン分析を解説していきます。

 

オンチェーン分析とは、NFTの取引履歴を分析することで、ブロックチェーンには取引時間、数量、NFTが誰から誰に送られたのか、といった情報が全て記載されています。

 

そういった情報を収集し分析することで、NFT保有者のNFTに対する潜在的なニーズを発見することが可能な場合があります。

 

今回は、NFTのコントラクトアドレスとしてはMEMBERSHIP Sのアドレス、元となるデータテーブルとしてはnft.tradesを使用します。

 

例①:あるNFTプロジェクトの取引高の推移をグラフ化

 

 

上記のlower(‘~~~’)の~~~の部分を自分が分析したいNFTプロジェクトにすることで、右のような図を出力することができます。こちらのグラフから、NOT A HOTEL NFTの取引高として、8月5日に最も取引されたことがわかります。

 

 

例②:買い手と売り手の推移(割合)

 

なお、マーケットプレイスとしてはOpenSeaを参照しています。

(NOT A HOTELは2022年10月29日時点でOpenSea以外で出品されていません)

 

ほぼ推移しておらず、NOT A HOTEL NFTの二次流通があまり発生していないことが把握できるかと思います。

 

 

参考までに、こちらはThe Sandboxの取引推移を示したグラフになります。

より流動的なNFTなら下図のようなグラフになり、NOT A HOTEL NFTの流動性は現時点ではかなり低いことが読み取れると思います。

 

 

例③:買い手と売り手の推移(絶対数)

このグラフは、OpenSeaにおけるNFTの買い手と売り手の推移を絶対数(割合ではなく人数)で表したグラフとなっています。

 

ここからも②と同様に、取引はほぼ発生していないことが見てわかると思います。

 

 

例④:NFTを保有しているホルダー数(アドレス数)

 

NOT A HOTEL NFTを所有している暗号資産ウォレットの数を重複なしで集計しています。

 

 

例⑤:NFTの合計ミント(発行)数

 

分析の結果、現在のNOT A HOTELのNFT(MEMBERSHIP S)の総発行量(供給量と言い換えてもOK)は271となっていました。なお、MEMBERSHIP Sの将来的な最大供給量は658と発表されています。

 

271/658で現段階での発行数は、約40%となっており、今後のキャンペーン展開で追加販売される形になると考えられます。

 

 

例⑥:トップ10ホルダーが所有しているNFTの数

NFTを多く保有しているアドレスにおける具体的な所有数を表した表となっています。

以下のデータからは、最もNOT A HOTELのNFTを所有しているアドレスでは、7個保有されていることがわかります。

 

Ownershipは、現在保有しているNFTの数をMEMBERSHIP Sの最大供給量である658で除することで計算できる、全体のNFT供給量に占める当該アドレスが有するNFTの割合です。

 

 

例⑦:NFT所有者全体の保有数分布

⑥のデータを保有者全体の分布で見た場合は以下のようになります。

結論、ほぼ全ての保有者が1つのみ保有しており、いわゆるクジラ(大口投資家)でなく、NFTに新規参入したホルダーも大多数存在することが想定されます。

 

 

例⑧:全体の保有数における保有数別の割合

⑥のデータを全体のうちの割合で見た場合は以下のようになります。

下の図を見ると80%以上のホルダーが保有数1であることから、NOT A HOTELのMEMBERSHIP Sは集中保有が比較的ないNFTであると言えますね。

 

 

例⑨:フロアプライスの推移

フロアプライスとは、NFTマーケットプレイスにおける当該NFTの取引が成立した際の最低価格を表す指標です。

 

なお、NOT A HOTELのNFTはOpenSeaというNFTマーケットプレイスでのみ出品されているので、このフロアプライスの定義はOpenSea上のものに従っています。

 

 

 

まとめ

本日のNFT徹底分析シリーズはいかがだったでしょうか。

 

今回分析を行ったNOT A HOTELの事例から、NFTを用いることで、購入者層の新規開拓と物件の流動性をあげることを実現したこと、NOT A HOTEL NFTは比較的に分散保持されているNFTであるという点がご理解いただけたかと思います。

 

この記事を書いた人

EY Strategy and Consulting入社後、グローバル案件を担当する。YouTuberのコスメディレクターや広告運用を経験後、Web3領域でゼロスリー(株)を創業。ソフトバンクアカデミア14期生。

石井貴大をフォローする
NFTプロジェクト
Game3
タイトルとURLをコピーしました